14.静電発電機

静電気工学と普通の電気工学の違いを説明する場合、電圧の違いだけではなく電流の違いをあげる必要があります。普通の電気回路で1MΩと言えば高抵抗ですが、静電気では低抵抗です。ですから発電機の性能も大きな違いがあります。これから説明する内容は「静電気学会誌」2006年第5号の特集解説からのものです。その他にも G. W. Francis の「Electrostatics Experiments」という本も参考にしてます。

世界で最初の静電発電機はドイツ人のゲーリケ(Guericke)が1660年に作ったもので、硫黄球を擦ることにより連続的に高いエネルギーをうる最初の発電機といわれています。

図14-1に示してあるのはベネット(Bennet)が誘導電荷を元にして作ったダブラー(Doubler)という機械です。これが新しい発電機の最初であろうと言われており1786年のことです。その後、様々な静電発電機が作られていましたが、その一つが右側の図14-2に示すHawkesbeeの発電機です。

ダブラー Hawkesbee

更に進んだものはウィムスハースト(Wimshurst)が1878年に発表した発電機などは現在用いられている発電機の原型で、このホームページの最初にその図があります。

20世紀に入って電気集塵装置、粒子や電子加速器をはじめとして核物理分析装置など、多くの高電圧を利用した装置が開発されるようになると、実用に使える高電圧電源が必要となり、新しい原理の高電圧発生装置が考案されてきました。
図14-3のヴァンデグラーフ(van de Graaff)発電機は電荷担体が絶縁ベルトで行われるもので、1931年発表のvan de Graaffの論文が基礎となっています。

ヴァンデグラーフ ダイロッド

ムーア(A. D. Moore)はミシガン大学教授でしたが、静電気の分野で幅広い活動を続けてきて、アメリカ静電気学会 (Electrostatic Society of America) を創設したのをはじめ、本格的な静電気ハンドブックを刊行してました。

特に有名なのはダイロッド発電機で、小型ながら簡単に発電できる優れものです。我々の大学でも、このダイロッド静電発電機を作りましたが、労働安全衛生総合研究所で非常に優れたものを製作し、高電圧を発生させていました。図14-4はその発電機です。


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