図5-1は図2-3と同じものですが、図5-1には等電位線も一緒に描かれています。等電位線、或いは、等電位面は電気力線とは直交しますので、平等電界では等電位線も直線で表されています。この等電位面と直交するという性質は常に成り立ちますので、電位分布の概要が分かれば詳しい計算をしなくとも、大体の電気力線が描けます。
電気力線は正電荷から出発して負電荷に終わるわけですから、電極上に電荷を誇張して表示してあります。この様な平等電界では電気力線の様子は簡単ですが、それ以外の形状ではそれ程簡単ではありません。
図5-2は同軸円筒内の電気力線の様子です。 図5-2 (a)は電極の形状で、図5-2 (b)は断面の様子です。電気力線の密度の高いところほど電界強度が大きいという様子が分かると思います。同軸円筒内の電界の様子を知ることは今後の一般的な形状での電界を知る上で役に立ちますので、少し計算して見ましよう。
図5-3で半径rの仮想円筒を考えます。長さは単位長さ、即ち1mで考えます。この円筒の表面から出る電束を(2-1)式を元に計算します。半径R1の内側電極上の電荷をQとしておきます。この値は後で求めます。(2-1)式の意味するところは、半径 r の円筒の表面から出て行く電束の総和はその内部に含まれる電荷に等しいというものです。単位長さ円筒の表面積は\(\ 2\pi r \)ですから表面から出て行く全電束は次のようになります。
\[\oint\mathbf{D}\cdot\mathbf{n}\ da=2\pi rD\tag{5-1} \]その内部に含まれる電荷はQとしましたから、
\[\int\rho\ dV=Q \tag{5-2} \]結局(2-1)式は次のように書けます。
\[2\pi rD =Q\tag{5-3} \]ところで均質な物質では次のような関係があります。
\[D=\epsilon E\tag{5-4} \]上記二式から電界強度は次のように求まります。
\[ E=\frac{Q}{2\pi\epsilon\ r} \tag{5-5} \]この電界強度を内側導体の半径R1から外側導体の半径R2まで積分したものは外部電圧と等しくなければなりません。
\[V_0= \int_{R_{1}}^{R_{2}}Edr= \int_{R_{1}}^{R_{2}} \frac{Q}{2\pi\epsilon\ r}dr=\frac{Q}{2\pi\epsilon }\ln\frac{R_{2}}{R_{1}} \]これより電荷 Q が求まります。
\[Q=\frac{2\pi\epsilon V_0} {\ln({R_{2}}/{R_{1}})} \tag{5-6} \]この値を( 5-5 )式に代入すると、電界強度の式が求まります。
\[E=\frac{1}{2\pi\epsilon\ r}\frac{2\pi\epsilon V_0} {\ln({R_{2}}/{R_{1}})}=\frac{V_0} {r\ln({R_{2}}/{R_{1}})} \tag{5-7} \]すなわち電界強度は半径に反比例するわけですから、内側電極で電界強度が最も強くなることが分かります。式の誘導は省略しますが、電極表面の面電荷密度\(\sigma \)と電束密度 Dとの間には次のような関係があります。
\[\sigma=D \tag{5-8} \]電荷は電極表面にだけあるわけですから、全電荷 Q を表面積でわると面電荷密度が出ますが、電束密度から簡単に求まります。
\[D=\epsilon E=\frac{\epsilon{V_0}} {r\ln({R_{2}}/{R_{1}})} \tag{5-9} \]半径rにR1を入れると内側電極の面電荷密度、R2を入れると外側が求まります。