7.放電現象

一般の人が「静電気だ」というのは、帯電した物体にさわるか、自分自身が帯電した状態で、接地物体にさわってショックを受けたことをさすようです。このショックが無ければ静電気は悪者にならなかったかもしれません。このショックは実は指先などからの放電によるものなのです。静電気工学の分野では帯電物体からの放電が多いのですが、逆に放電によって帯電状態を作り出すことも多いのでここで放電現象を先に説明します。

空気は基本的には絶縁物ですので電気を通しません。空気中に電池を長時間放置しておいても電池の電気量が保たれているのは空気を通して電流が流れないためです。電流は正負電荷の移動によって生ずると先ほど述べましたが、自然界でも空気中に多少のイオンが存在します。宇宙線や地球上にある放射能によって空気分子が電離されて正負イオンが絶えず発生しています。ですから空気中に電界があればこれらのイオンが移動して電流となります。しかし、その量は極めて僅かで通常無視できる程度です。

放射能などによって空気中で電子が発生し、そこに強い電界があればこの電子は他の中性分子と衝突し、それを電離させて更なる電子を発生させることが出来ます。この様に次々に電子が増倍していく現象を電子なだれと称しています。この様な電子なだれが生ずるとその付近は電子と正電荷が混在するプラズマ状態になります。プラズマ状態は電荷が移動できる状態ですから一種の導体です。このプラズマが二つの電極をつなぐようになると絶縁性が無くなって全路破壊になると言いますが、その途中の過程を火花放電と称しています。このように空気が絶縁物で無くなることを絶縁破壊と言いますが、電界強度でいうと一般的に\(\ { 3MV / m} \) が目安とされています。

この火花放電は放電工ネルギーが大きいため可燃性気体に着火したり、爆発を引き起こす元になります。放電にはこの火花放電のほかに色んな形態の放電があります。しかし、静電気工学で広く利用されているのはコロナ放電です。

空気中電荷の電気力線

コロナ放電は電極形状が極端に非対称な不平等電界中で発生します。図7-1は不平等電界の例として針対平板電極でのコロナ放電を模式的に表したものです。電界強度分布を見ますと針電極の先端部が極端に高い電界強度になります。その先端部付近では電子なだれが生じてプラズマ状態ですから電気的には導体と考えられます。針電極から離れますと電界強度は次第に弱くなります。電子なだれの発生している電界の強い領域は図で点線で囲った部分です。この領域から外へ出ると電界が弱いために最早電子なだれは生ぜず、一種類の電荷のみが平板電極へ向かって移動しますので、この領域はコロナシャワー領域とか、ドリフト領域と考えられます。電極へ加える電圧の極性によってシャワーの極性が変わります。


移動先  6.空間電荷のある場合の電界の様子  目次  8.電荷の発生

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