図9-1のキャパシタ(コンデンサ)に蓄積された電荷は抵抗を通して流れ、最終的にすべての電荷が中和されます。このような現象を電荷緩和と言います。 抵抗を通して流れる電流は次のように表されます。
\[i=\frac{V_0}{R} e^{-t/\tau} \tag{9-1} \] \(V_0\):キャパシタンスに蓄えられた初期電圧緩和時定数は次式で表されます。
\[\tau=C R \tag{9-2} \]電圧と電荷の間には次のような関係があります。
\[Q=C V \tag{9-3} \]少し数値を入れて計算してみましよう。静電容量が、1 \( \mu F \)で抵抗が 10 M\(\Omega\)の場合を考えます。キャパシタの最初の電圧は 100Vとします。
\(\tau \)= 10-6 X 107 = 10 sec
i = \(\frac{100}{10^7}e^{-t/10}\)= 10-5 \(e^{-t/10}\)
Q = 10-6 X 100 = 10-4
これらの値を入れて(9-1)式を表したものが図9-2です。
これから次のようなことが分かります。はじめの電圧が 100 Vであったと言うことは、このキャパシタに 10-4 C の電荷がありました。流れ始めの電流は、10 \(\mu A \)です。緩和時定数が 1 0 秒ですので、最初の値が \( e^{-1}\)、すなわち 36.8 %に下がるのには 10 秒 必要だということです。3 \(\tau \)、すなわち 30 秒たつと最初の値の 5 %になります。 この緩和時定数は電荷の減衰を示す指標になります。
図9-3は誘電率 \(\epsilon \)、導電率 \(\kappa \) の絶縁性液体の中に二枚の電極が挿入された状態を表しています。その電極間隔は d で面積は A とします。SI 単位系を使っていますから、長さの単位は m です。この電極間のキャパシタンスは次のように表されます。
\[C=\frac{\epsilon A}{d} \tag{9-4} \]同様に電気抵抗は次のようになります。
\[R=\frac{d}{\kappa A} \tag{9-5} \]緩和時定数を表す( 9-2 )式にこれらの値を代入します。
\[\tau=C R=\frac{\epsilon A}{d}\frac{d}{\kappa A}=\frac{\epsilon}{\kappa} \tag{9-6} \]このように液体、または固体の緩和時定数は物質の電気的性質である誘電率と導電率で表すことが出来ます。
誘電率は比誘電率と真空の誘電率の積です。
\[\epsilon=\epsilon_r \epsilon_0 \tag{9-7} \]真空の誘電率は次のように与えられています \[\epsilon_0=8.85\times10^{-12} \ \mathrm{F/m} \]
例えば石油類の比誘電率は大体 2 ですので、導電率が\(10^{-12} \ \mathrm{S/m}\) の場合、
\[\tau=\frac{\epsilon}{\kappa}=\frac{2\times8.85\times10^{-12} }{10^{-12}}\approx{18}\; \mathrm{sec} \]となります。この帯電した液体は 18 秒で最初の電荷の 38 %に落ちます。 54 秒後には 5 %にまで下がります。
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