10.放電のエネルギー

プロバンのような可燃性気体と空気が一定の割合で混合していて、火の元があると着火する可能性があります。しかし、着火する混合の割合には下限と上限があり、その範囲内でのみ着火が可能です。可燃範囲にある混合気体に、着火に必要なエネルギーが外部から供給されると引火して火災や爆発が起こります。その着火源としては機械的、熱的、電気的、化学的着火源などがありますが、静電気による放電も着火源となりえます。

金属球間の火花放電

帯電した物体からの火花放電が着火源となりうるのですが、どの程度のエネルギーがあるのかを示します。図10-1のように二個の金属球に正負の電荷が与えられた状態で、一方の電極を他方に接近させた場合、ある距離で金属球の間の電界が空気の絶縁破壊強度を超えて絶縁破壊を生じ火花放電となります。

その時の火花放電工ネルギーは

\[W=\frac{1}{2}CV^2=\frac{1}{2}QV=\frac{Q^2}{2C} \tag{10-1} \]

但し C :金属間の静電容量 [ F ]、 V :金属間の電圧 [ V ]、 Q :帯電電荷量 [ C ]、 W :放電工ネルギー [ J ]

と与えられます。

この式の意味するところは二つの球間の静電容量に電荷 Q が存在すると、その電界のエネルギーは W というものです。それが放電によって熱として気中に放出されるわけですから、このエネルギーが混合気体の着火エネルギーより大きければ着火します。

着火エネルギーの測定装置

図10-2は、この様な放電現象を基にした混合気体の着火エネルギーを測定する原理を示したものです。放電電極間の静電容量よりはるかに大きい既知の静電容量 C を用いています。この C に蓄積された電荷から電界エネルギーを計算します。

気体の混合比を変えて着火エネルギーを測定したのが図10-3で、その曲線の最小値が最小着火エネルギーです。図10-3に示した気体の場合、約0.3 mJ が最小着火エネルギーです。

当量比に対する着火エネルギー

人体の静電容量は大体 200 pF 位ですから、10 kV に帯電していたとすると

\[W=\frac{1}{2}CV^2=\frac{200\times10^{-12}\times(10000)^2 }{2}=10\times10^{-3}\; \mathrm{J} \]

となり、通常の気体の最小着火エネルギーよりはるかに大きいことが分かります。


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