11.静電気力

静電気の応用には力学作用を用いるものが沢山あります。また生産工程で発生する静電気障害も主としてこの力学作用です。この静電気力は大きく分けてクーロンカと分極力になります。

11.1 クーロンカ

二つの電荷間のクーロン力

図11-1のような二つの電荷がある場合、その電荷が異種ならば引き合う力、同種ならば反発する力が作用します。その力は距離の2乗に反比例します。式で表すと次のようになります。

\[ f=\frac{1}{4\pi\epsilon}\frac{q_1q_2}{r^2} \tag{11-1} \]

\({q_2}\)が無く\({q_1}\)だけがおかれた時、\({q_1}\)の周りに出来る電界は ( 2-1 )式より

\[ E=\frac{q_1}{4\pi\epsilon\ r^2} \tag{11-2} \]

と表されます。図11-1のように \({q_1}\)から r の点に \({q_2}\)を持ってくると \({q_2}\)に働く力は

\[f=q_2 E \tag{11-3} \]

と表わすことができます。この式をもう少し一般化しべクトルで表します。

\[\mathbf{f}=q\ \mathbf{E} \tag{11-4} \]

この式の意味するところは、電界の中に電荷を置くとその電荷に力が作用しますが、その向きは電荷が正ならば電界と同じ方向、電荷が負ならば電界とは逆の方向に働くというものです。

電荷が広がりを持った空間電荷の場合、( 11-4 )式は電荷密度 \({\rho}\) を用いて表され、力も単位体積当たりの力となります。

\[\mathbf{F}=\rho\ \mathbf{E} \tag{11-5} \]

影像電荷との電気力線

電荷が平板の導体付近におかれた場合、図11-2に示すような影像電荷が出来て、その影像電荷との間に力が作用します。その力は( 11-1 )式での r が 2h になったのと同じであり、影像力と呼ばれるものです。空気中で帯電した粒子が壁面などに付着するのは主にこの力によるものです。導体が平面で無い場合には影像電荷の値は元の電荷量とは異なり、影像電荷の位置も異なってきます。

11.2 分極力

配向力の説明

クーロンカは正味の電荷を持った物体に作用しますが、分極力は正味の電荷を持たない物体にも作用します。これは導体や誘電体との区別無く色々な形で現れます。

図11-3は平等電界中に置かれた線状粒子に作用する力を表しています。図に示すように、正電極に近いほうには負電荷が誘起され、負電極に近いほうには正電荷が誘起されます。誘起電荷と電極との間には力が作用しますから、この粒子は回転させられて電気力線と同じ方向を向くようになることから配向力と呼ばれています。

グレーディエント力の説明

図11-4のような不平等電界中に置かれた粒子には電界によって粒子表面の左右に電荷が誘起されます。粒子の左側の電界が右側より強いから誘起される分極電荷も左側の方は集中してます。左側の分極電荷に働く力は\({f_1}\)、右側の分極電荷に働く力は\({f_2}\)ですが、\({f_1}\)の方が強いから全体の力は\({f_1}\)の方向になります。このように不平等電界の中で、常に電界の強い方向へ働く力でなので、電界勾配力とかグレーディエントカとか呼ばれています。一般的には次のような式で表されます。

\[\mathbf{F}=\frac{va}{2}\nabla{{E_e}^2} \tag{11-6} \] ただし、\(v \) :物体の容積、\(a \):分極電荷密度 \([\mathrm{C/m^2}] \)、\(E_e \):物体の置かれた場所の電界強度

物体が比誘電率 \(\epsilon_r\) の球の場合は次のように表されます。

\[\mathbf{F}=2\pi a^3\frac{\epsilon_r-2}{\epsilon_r+2}\ \epsilon\nabla{{E_e}^2} \tag{11-7} \]          但し、\(\epsilon\) は媒質の誘電率

しかし一般的にはこのグレーディエントカはクーロンカに比べてかなり小さいものです。


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